――外為特会と一般会計の円グラフから読み解く
政府は、外国為替資金特別会計、いわゆる「外為特会」で生じた利益の一部を一般会計へ繰り入れ、政策経費などの財源に充てている。
令和8年度(2026年度)の一般会計への繰入額は、約3兆1,301億円に達する。
では、この利益はどこから生まれ、一般会計の中でどの程度の規模を占めているのだろうか。
外為特会とは何か
外為特会は、政府による為替介入や外貨準備の管理・運用を行う特別会計である。
政府が円売り・外貨買い介入を行うと、外為特会には米国債などの外貨資産が蓄積される。一方、その円資金は主として政府短期証券を発行して調達する。
外為特会は、次のような構造になっている。
- 資産:米国債などの外貨資産
- 負債:円資金を調達するための政府短期証券
- 収入:外貨資産の利子や運用収入
- 支出:政府短期証券の利払い、事務費など
外貨資産から得られる収入が支出を上回れば、外為特会に決算上の剰余金が生じる。
外為特会の歳入構成
.png)
【円グラフ①:令和8年度・外為特会の歳入構成】
令和8年度の外為特会の歳入総額は、約4兆9,430億円である。
| 歳入項目 | 金額 | 構成比 |
|---|---|---|
| 外貨資産の運用収入 | 4兆6,542億円 | 約94.1% |
| 外国為替等売買差益 | 1,689億円 | 約3.4% |
| その他 | 1,199億円 | 約2.4% |
| 合計 | 4兆9,430億円 | 100% |
円グラフから分かるように、外為特会の収入の大部分は、米国債などの外貨資産から得られる利子・運用収入である。
したがって、外為特会の利益を、単純に「円安によって生じた為替差益」と考えるのは正確ではない。中心となるのは外貨資産の利子収入であり、そこから政府短期証券の利払いなどを差し引いた結果として剰余金が生じる。
剰余金の一部が一般会計へ移される
外為特会で発生した剰余金は、すべてが一般会計に移されるわけではない。
為替変動や金利変動による損失に備えるため、一部は外為特会の運用資金である外国為替資金に組み入れられる。残りが一般会計や翌年度の外為特会へ繰り入れられる。
その流れは、次のように表せる。
外貨資産の利子・運用収入
↓
政府短期証券の利払いなどを控除
↓
外為特会に剰余金が発生
↓
一部を外為特会内に留保
↓
残りの一部を一般会計へ繰入れ
令和8年度に一般会計へ繰り入れられる金額は、約3兆1,301億円である。
一般会計の歳入構成
.png)
【円グラフ②:令和8年度・一般会計の歳入構成】
令和8年度の一般会計歳入総額は、約122兆3,092億円である。
通常、外為特会からの繰入金は「その他収入」に含まれるが、その規模を分かりやすくするため、以下では独立して表示する。
| 歳入項目 | 金額 | 構成比 |
|---|---|---|
| 租税・印紙収入 | 83兆7,350億円 | 約68.5% |
| 公債金 | 29兆5,840億円 | 約24.2% |
| 外為特会からの繰入金 | 3兆1,301億円 | 約2.6% |
| その他収入(外為特会を除く) | 5兆8,601億円 | 約4.8% |
| 合計 | 122兆3,092億円 | 100% |
外為特会からの繰入金は、一般会計全体の約2.6%に相当する。
$3.1301兆円 \div 122.3092兆円 = 2.56%$
税収や国債収入と比べれば小さいものの、3兆円を超える財源であり、決して無視できる規模ではない。
また、「その他収入」約8兆9,902億円のうち、外為特会からの繰入金は約34.8%を占める。一般会計の税外収入においては、外為特会が重要な財源になっていることが分かる。
一般会計への繰入れはドル売りではない
注意すべきなのは、一般会計へ3兆円を繰り入れるために、政府がその都度、米国債やドルを売却しているわけではない点である。
外為特会から一般会計への繰入れには円資金が必要になるため、政府は見合いとなる政府短期証券を発行して円を調達する。
したがって、外為特会の利益を一般会計の財源として利用していることは事実だが、その繰入れ自体が、直ちにドル売り・円買い介入になるわけではない。
外為特会は「埋蔵金」なのか
外為特会の剰余金は、政府にとって貴重な税外収入である。そのため、財政事情が厳しくなるほど、一般会計への繰入れを増やそうとする圧力が強まりやすい。
しかし、外為特会には、為替変動や内外金利差の縮小・逆転によって損失が発生する可能性もある。剰余金をすべて一般会計へ移せば、外為特会の財務基盤が弱くなる。
つまり、外為特会の利益には二つの役割がある。
- 一般会計を支える財源
- 為替・金利変動による損失への備え
外為特会は自由に使える「埋蔵金」ではなく、財政利用とリスク管理のバランスが求められる資金なのである。
まとめ
政府は、外為特会の利益の一部を一般会計へ繰り入れ、財源として活用している。
令和8年度の繰入額は約3兆1,301億円で、一般会計歳入全体の約2.6%、その他収入の約34.8%を占める。
外為特会の利益の中心は、円安による含み益ではなく、米国債などの外貨資産から得られる利子・運用収入である。また、一般会計への繰入れのたびにドルを売却しているわけでもない。
外為特会は、政府に安定した税外収入をもたらす一方、為替や金利の変動リスクを抱えている。したがって、その利益は財源として活用できるものの、恒久的で確実な財源とみなすことには慎重であるべきだろう。
出典:
- 財務省「令和8年度一般会計予算歳出・歳入の構成」
- 財務省「令和8年度 財務省所管特別会計予算概算の概要」
- 財務省「外国為替資金特別会計」


コメント