この通達は、**「労働保険料を見込みで納め、翌年に精算する場合、会社負担分をいつ損金にするか」**を定めています。
読み解くポイントは、①会社負担分と従業員負担分を分けること、②概算額と精算差額を分けることです。
1.概算保険料とは
労働保険料は、まず賃金の見込額を基に「概算保険料」を申告・納付し、後で実際の賃金額に基づく「確定保険料」との差額を精算する仕組みです。
この通達の税務処理を整理すると、次のとおりです。国税庁
| 区分 | 会社負担分の税務処理 |
|---|---|
| 概算保険料 | 申告した日、または納付した日の属する事業年度に損金算入 |
| 確定した結果の不足額 | 原則、申告した日、または納付した日の属する事業年度に損金算入 |
| 不足額の例外 | 決算日までに保険年度が終了していれば、申告前でも未払計上して損金算入できる |
| 確定した結果の超過額 | 確定保険料の申告をした日の属する事業年度に益金算入 |
以下、金額は説明用の仮例です。
2.(1)概算保険料:従業員負担分は会社の経費にしない
例えば、概算保険料30万円を納付し、その内訳が次の場合です。
- 会社負担分:24万円
- 従業員負担分:6万円
会社の損金になるのは、24万円だけです。従業員負担分6万円は会社が一時的に立て替えた金額なので、立替金等として処理します。
納付時に費用計上する例は、次のとおりです。
(借方)法定福利費 240,000 /(貸方)普通預金 300,000
(借方)立替金 60,000 /
従業員負担分を給与から回収すると、その分だけ立替金を減らします。
また、この通達では申告時の損金算入も認めています。そのため、申告時に会社負担分を費用・未払金として計上する場合には、まだ納付していなくても損金にできます。申告時と納付時の両方で費用にするわけではありません。
概算保険料の会社負担分は、対象期間が翌事業年度にまたがるからといって、税務上必ず月割りする必要はない、という点もポイントです。
3.(2)確定保険料の不足額:追加負担を損金にする
概算で会社負担分24万円を計上した後、確定した会社負担分が27万円になったとします。
確定額27万円 − 概算額24万円 = 不足額3万円
この3万円を追加で損金にします。通常は、確定保険料を申告した事業年度、または納付した事業年度で処理します。
(借方)法定福利費 30,000 /(貸方)未払金 30,000
ただし書は「申告前に計上できる場合」を定めています。
例えば、3月決算法人で、労働保険の保険年度も3月31日に終了する場合です。その終了した保険年度の会社負担分の不足額が3万円と算定できれば、後日行う申告を待たず、3月決算で未払計上して損金算入できます。
ただし、これは終了した保険年度の精算不足額に関する扱いです。将来の概算保険料を、決算時に見積もって何でも損金にできる、という規定ではありません。
4.(3)確定保険料の超過額:払い過ぎた会社負担分を益金に戻す
逆に、概算で会社負担分24万円を計上したものの、確定した会社負担分が22万円だった場合です。
概算額24万円 − 確定額22万円 = 超過額2万円
この2万円は、以前に損金にした金額の戻りなので、確定保険料を申告した事業年度の益金にします。
還付を受ける場合の仕訳例です。
(借方)未収入金 20,000 /(貸方)法定福利費 20,000
貸方を「雑収入」とする方法もあります。どちらでも、利益を2万円増やす処理になります。
ここは不足額と違い、実際に還付金が入金されるまで待つ規定ではありません。翌年度の保険料に充当する場合でも、申告した事業年度で益金にします。
なお、従業員負担分の払い過ぎは、会社の収益ではなく、従業員との立替金・預り金等の精算です。
要するに、**会社負担分について「概算で経費にする→不足なら追加の経費→余れば利益に戻す」**という通達です。特に、不足額には申告前の未払計上を認める例外があり、超過額には同じ例外が書かれていないことが、読み取りの要点です。


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